斎藤工と
広島を
旅する

「広島を二人で旅するなら、相手はどんな人がいい?」
始まりは、そんな他愛ない話から。
「あんまり会話がなくても、気詰まりじゃない人」
「ちょっとしたステキなもので、ニコッと笑い合える感じ?」
「分かる。二人だけの秘密を分かち合える人がいいな」

広島には、あまり派手ではないが
味わいのある土地がたくさんある。
そこここに隠れている小さな宝石のような魅力を、
見つけ出せる人と、旅がしたい。

そうして決まった広島の旅のパートナーは、
斎藤工さん。
俳優として自在に変化しながらも、
確固たる自分を感じさせる人だ。

果たして斎藤工さんとの二人旅は、
どんな旅になるだろう?

呉線の思い出

 さっき三原駅から電車に乗ってしばらくしたら、「あれ、これに乗ったことがあるぞ」と記憶がフラッシュバックしてきました。映画版『海猿』の一作目に訓練生として出た時に、呉でかなり長い間合宿していたんです。もう10年以上前。海上保安庁の訓練施設での撮影は、それはそれはハード。半ば住みながら生活しているような感じで、よく呉線に乗っていたんです。その記憶が、蘇ってきた。

 いい思い出がたくさんあります。「呉龍」っていう店の冷麺がクセになるくらい美味しかったり、呉駅の近くにあったテール鍋を先輩にごちそうしてもらったり。同世代の俳優が多かったから、今でもつながっている仲間も多い。撮影だったけど、「仲間といっしょにミッションを遂行した感じ」でした。

 呉では、太陽時間にバイオリズムが合っていたから、その後東京に戻った時にしばらく感覚が戻らなかったことを覚えています。東京出身のはずなのに、からだが広島時間になっていた(笑)。

JR呉線

広島県三原市の三原駅から広島駅まで、海沿いに竹原駅や呉駅などを走る路線。車窓からの瀬戸内海の眺めが美しい。MAP

竹原港

大崎上島へは、橋が繋がっていないため本土からフェリーで訪れる。この日は竹原港から約30分の船旅。MAP

秘境を旅する

 初めて一人旅に出たのは、15歳の時。ネイティブ・アメリカンに興味があって、ホピ族の村を訪ねたのが最初です。

 旅って、ふだんの自分とは違う感覚を働かせることができるのが楽しい。ぼくがよくやっていたのは、1泊目の宿だけ決めて現地へ行って、地元の人のおすすめを聞いて旅をするという方法。生活している人の言葉は、やっぱり芯があって信用できる。「みんながいいと言っているもの」ではなく、「出会った人が個人的に好きだと教えてくれたもの」を体験する旅は、けっこう楽しいです。

 今は仕事柄、気の向くままに旅をするというよりは、呼ばれて出向く旅が多くなりました。行くと「あ、ぼくはこのために、この場所に来たんだな」と気付くことが多い。行くべきタイミングで、行くべき場所に呼ばれるのかもしれません。今日もこうして大崎上島に来ることができました。これもなにかの始まりかもしれませんね。行き先を自分で決めないっていう、秘境への辿り着き方が、最近は気に入っています。

大崎上島

温暖な気候に恵まれ、柑橘の島としても知られる。古くから造船で栄えた歴史があり、島内にその風景を残す。MAP

広島といえば

 広島といえば、佐々部清監督の『夕凪の街 桜の国』という映画が印象に残っています。原爆で被曝した女性の物語です。佐々部監督は、去年原爆ドームの隣で、この映画の野外上映会をされています。僕自身、『海猿』の撮影の時に3度くらい原爆ドームへ足を運んで、場の持つ空気を感じていたので、きっと素晴らしい上映会だったと思います。映画は、どこで上映するかというのも、とても大事。暑かったか寒かったか、だれと見たのか、どんな風が吹いていたか。その五感で感じたものがすべて記憶になっていくはずなので。

 僕もいま「cinema bird」という移動映画館のプロジェクトをやっています。これは映画館がない地域で、子どもたちや地域の人に劇場体験を楽しんで欲しくて始めました。一本の映画が人生を変えたり、将来の職業を教えたりって、きっとあると思うんです。

木江の町並み

造船業や潮待ちの停泊地として栄えた島の、往時の賑わいの様子を残す。いまでも古い3階建の木造建築が立ち並ぶ。MAP

一正堂製菓

ふんわりレモンの風味が香るレモンケーキを始め、すべて手づくり。0846-64-2132MAP

島の時間

 大崎上島は、橋がつながっていない島です。なぜかフェリーに乗って島にやってくると、車で来た時よりも、島の一員に加わった感じが強くします(笑)。

 島は、夜になると真っ暗になるところがいいですね。月明かり、星明かりが帰り道を照らすような場所は、なかなかありませんから。こういう場所では、会話をしない時間こそが主人公。都会での無言とは意味が違う。また来たいな。

 この島には映画館がありませんよね?せっかく縁ができたのだから、この島で移動映画館ができたらいいな。きっと島の年配の人たちは、若い頃はたくさん映画を見ていた世代だと思うけれど、これから映画に再び劇場で出会うことは、なかなか骨が折れる。小さい子どもたちも同じです。実はどんなところでも映画館になるんです。お寺とか、鍾乳洞とか、酒蔵とか。いつか実現できるといいですね。

きのえ温泉 ホテル清風館

島の高台にあり、豊かな海の幸と温泉、景色が楽しめる宿。0846-62-0555MAP

中ノ鼻灯台

明治27年から、瀬戸の9灯台の一つとして瀬戸内海の海の航海を見守る、現役の灯台。瀬戸内の多島美を望むスポットとしても人気。MAP

広島県究極の
ガイドブック
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斎藤工さんの
ムービーをもう一度